介護職をめざすあなたへ
介護の仕事に関心を持ち、「人の役に立ちたい」と思って一歩を踏み出そうとしている方へ。
介護は単なる「お手伝い」ではなく、人生の最終章に寄り添う仕事です。やりがいが大きい一方で、体力的にも精神的にも負担がかかる場面があります。だからこそ、事前に心構えを持って臨むことが大切なポイントになります。
ここでは、これから介護職を始める方が意識しておきたい心構えをまとめました。
1. 「自立支援」という姿勢を大切にする
介護の現場に入ると、食事や入浴、排泄といった日常生活の援助を行うことになります。はじめは「全部やってあげなければ」と思いがちですが、それはご利用者の自立を奪ってしまうことにつながります。
介護の基本は「できることはご本人にしていただき、できない部分を支える」という自立支援の考え方です。
例えば、着替えの際にボタンをとめることが難しい方には「袖を通す」まではご本人にしていただき、ボタンだけを介助する。このように「できること」と「できないこと」を見極める視点が大切です。
2. 「安全第一」を忘れない
介護の現場では転倒や誤嚥など、事故のリスクが常にあります。特に初心者は「早く動かないと」と焦ってしまうこともありますが、スピードよりも安全を優先することが大切です。
たとえば車いすへの移乗では、ブレーキがしっかり止まっているか、ご利用者の足は床にしっかりと着いているかなど安全確認を行い、声かけをしながら利用者のペースに合わせて行います。食事介助では、ご利用者の姿勢(身体が傾いていないか、足が床にしっかりついているか等)を正しく整えてから口に運ぶこと。飲み込んだことを確認し次の食事を口に運ぶことなど小さな注意の積み重ねが事故防止につながります。
3. 「観察力」を養う
介護はただ身体を支えるだけではありません。ご利用者の表情や仕草から体調の変化を感じ取る力が求められます。
例えば、普段より食欲が落ちている、笑顔が少ない、身体に浮腫みがでているなどの小さな変化は、体調不良や心の不安のサインかもしれません。
「なんとなくいつもと違うな」と気づける観察力は、経験を重ねることで磨かれていきますが、はじめから「注意深く見る」という意識を持つことが第一歩です。あなたの気付きがご利用者の命を救います。
4. 「傾聴」の姿勢を持つ
介護の仕事は身体のケアだけでなく、心のケアも大きな役割を担います。ご利用者の多くは、高齢になり身体機能が衰えていく中で、不安や孤独を抱えています。
その気持ちに寄り添うためには、話をよく聞くことが大切です。相槌を打つことは話を聞いているという合図になり、ご利用者は安心感して話をすることができます。ご利用者の話の中から本当のお困りごとやニーズを引き出すこともできます。そして忘れてはいけないのは、高齢者の方は人生の大先輩ということ。必ず敬語で対応するようにしましょう。ちゃん付けではなく〇〇さんと呼びましょう。
5. 「チームで支える」という意識を持つ
介護は一人で完結する仕事ではありません。介護職員、看護師、ケアマネジャー、リハビリ職、家族など、多職種が連携してご利用者を支えています。
新人の頃は「迷惑をかけてはいけない」と思い込み、一人で抱え込んでしまうこともあります。しかし、それはミスや負担の増加につながりやすいものです。困ったときは素直に相談し、報告・連絡・相談を徹底することが、結果的にご利用者にとって最良のケアになります。ご利用者の身体や心の変化に気付いた時にもチームに報告し共有することで、よりよい対応に繋げることができます。
6. 「自分を大切にする」
介護は人を支える仕事ですが、自分自身の心身が健康でなければ続けることはできません。
長時間の立ち仕事や夜勤で体調を崩したり、精神的に疲れて「燃え尽き」てしまうケースも少なくありません。だからこそ、休むときはしっかり休み、趣味やリフレッシュの時間を大切にすることが必要です。
また、辛いことや悩みがあれば同僚や上司に相談しましょう。「我慢すること」が美徳ではなく、「助けを求めること」ができる人は人も助けることができます。
自分自身の心に余裕のあるなしでご利用者への対応も変化してきます。自分自身のため、相手のために自分を大切にしましょう。
7. 「完璧を求めすぎない」
はじめて介護に携わると、「失敗してはいけない」「全部正しくやらなければ」と思い込み、過度に緊張してしまうことがあります。
もちろん介護は命に関わる場面もあるため、慎重さは大切です。しかし、誰しも最初から完璧にできる人はいません。失敗したときは素直に振り返り、次につなげることが大切です。
介護の現場は日々学びの連続です。「成長していく過程を楽しむ」という心持ちで臨むと、前向きに続けていけます。
8. 「介護のやりがい」を忘れない
介護の仕事は大変さもありますが、その分「ありがとう」と言われたときの喜びは格別です。
ある利用者が少しずつ歩けるようになった、笑顔が増えた、自分の名前を覚えて呼んでくれた――そうした一つひとつの瞬間が、大きなやりがいになります。
苦労の先にある「人の役に立てる喜び」を心に留めておくことが、続けていくための大きな支えになります。
まとめ
介護を始めるときの心構えを整理すると、次のようになります。
- 「自立支援」を大切にする
- 「安全第一」で行動する
- 小さな変化を見逃さない「観察力」を持つ
- 「傾聴」で心に寄り添う
- チームで協力する
- 自分の心身を大切にする
- 完璧を求めすぎず、学び続ける
- やりがいを心の支えにする
介護は、人の人生に深く関わる大切な仕事です。初心者の頃は不安も多いと思いますが、心構えを持って一歩を踏み出せば、きっと自分自身も成長し、かけがえのない経験が積み重なっていきます。
この心構えが実践できればご利用者だけでなく職員からの信頼も得ることができます。まずはできることから始めてみてください。介護の世界は、あなたを必要としています。



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