~ケアマネジャーが伝えたい、在宅生活を続けやすくする工夫~
はじめに
家族の足腰が弱り、転倒が心配‥立ち上がりが難しくなっている‥と感じ始めてませんか?
介護と聞くと、立ち上がらせてあげたり、転ばないよう支えるといったことを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。実は「環境を整える」ことで、その悩みは大きく軽減することができます。
私はケアマネジャーとして多くの家庭を訪問してきましたが、転倒するリスクは「家の作り」や「動線」に左右されることが少なくありません。
今回は、家族を見守る皆さんが無理なく続けられるようにするための環境づくりのコツを紹介します。
① 動線を見直して「移動距離を短く・安全に」
自宅内の動きは同じ動線の繰り返しが多いです。たとえば「寝室やリビング」から「トイレ」間の移動は1日の中でも何度も繰り返される動作です。この移動距離を短くし、且つ転倒不安なく移動できるようにすることで、本人や家族の身体的・精神的負担はぐっと改善されます。
✳ポイント
- 寝室やリビングからトイレまでの経路をできるだけ短くする(部屋を変更する)
- 廊下や出入り口に手すりを設置する
- 通路に物を置かず、歩行を妨げない
たとえば、2階が寝室で1階にトイレがあるとします。寝室の変更を提案すると、「運動になるから」と言われることが多いです。しかし、起床直後は身体が固くなり、日中と比較し動きが悪いことが多いです。覚醒状態も悪い為、転倒のリスクが高まります。転倒し骨折‥となってしまうとリハビリのためと思ってしていたことがマイナスになってしまいます。また環境変化になじむ能力は若いほど高いので、足腰の弱りを感じはじめたら早めに検討しましょう。
② 手すり・照明・段差…安全のための「三種の神器」
転倒は在宅生活で最も多い事故のひとつです。転倒を防ぐには、「手すり」「照明」「段差解消」が基本の三点セットです。
手すり
- トイレ、浴室、玄関、階段などの“立ち座り”や“方向転換”の場所に設置
- 握りやすい太さ(直径3.2〜3.5cm)が理想
照明
- 夜間の廊下やトイレ前に足元灯を設置
- 明るさは「昼白色」がおすすめ(暗すぎず、眩しすぎず)
段差解消
- 敷居の段差はスロープで補う
- 絨毯やコード類もつまずきの原因になるため整理
小さな改善ですが、「ヒヤリ」とする瞬間をなくすことが、安心して在宅生活を続ける第一歩です。
③ ベッドまわりの環境を整える
布団やベッドを使っている場合も「ベッド周辺の環境」は整えることができます。一人で立ち上がれず介助が必要になったと思われる方でも、適切な環境にすることで、一人で立ち上がれるようになったり、介助の負担がぐんと軽減されます。
✳ポイント
- ベッドの高さは、ベッドに座ったときに膝が90度、足の裏が床にきちんとつくこと
- ベッドや布団の横に手すりを設置する
- 介護用ベッドの利用を検討する
介護保険を利用し、ベッドや布団の横に置き型の手すりをレンタルすることができます。要介護2以上の認定をお持ちの方は介護用ベッド(高さや背もたれの高さを調節できる)をレンタルすることができます。また要支援や要介護1の方も自費サービスとしてレンタルできることもあるので、ケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談ください。
④ トイレ・お風呂は「使いやすさ」と「プライバシー」を両立
トイレやお風呂は、介護する人・される人、どちらにとってもストレスがたまりやすい場所です。
トイレの工夫
- 手すりを設置し、立ち座りや衣類の着脱の安定性を高める
- 温水洗浄便座にすることで清潔維持や便意の促し効果も(温水洗浄便座への交換は介護保険適用外※必要性によっては適用となることもあり)
- 夜間用ポータブルトイレも選択肢に
お風呂の工夫
- 浴室に手すりを設置する
- 浴室内に滑り止めマットを敷く
- シャワーチェアや浴槽台を使って安全に入浴
「入浴が大変だからデイサービスで入る」という選択も◎。
まとめ:小さな工夫が、大きな安心につながる
環境を整えることは、決して特別なことではありません。
家具の位置を変える、照明を明るくする、手すりを1本取りつける——。
その一つひとつが、一人できることを増やし、本人・家族にとっても安心できる場を増やすことに繋がります。
もし「どこから手をつければいいかわからない」と感じたら、
地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してみましょう。実際にの自宅の環境に応じて専門家からアドバイスを得ることができます。また住宅改修や福祉用具の貸与など、介護保険が適用となることもあります。 手すり1本でも対象となるので、お気軽にご相談ください。
無理のない介護は、「家の環境」から。
あなたとご家族が、少しでも安心して笑顔で過ごせるように。
今日からできる一歩を、ぜひ取り入れてみてください。



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