高齢者が転倒・骨折で入院したときの流れと家族が知っておきたいポイント

家族介護者

高齢者に多い「転倒による骨折」。今まで一人で歩けていたのに‥このまま歩けなかったら‥。と、不安になる方も多いです。
この記事では、転倒骨折による入院から退院・在宅復帰までの流れと、家族が押さえておきたい支援のポイントを、介護支援専門員(ケアマネジャー)の視点から解説します。


入院直後(急性期病院):命と機能を守る治療の段階

急性期とは?

転倒による骨折が起きると、まず救急搬送されるのが「急性期病院」です。ここでは命を守るための治療と、手術などの緊急対応が中心になります。
大腿骨頸部骨折の場合、多くは手術で骨を固定します。手術後はできるだけ早くリハビリが始まります。保存療法の場合には、骨折部位を固定し、数週間は安静にする必要性があります。

家族が確認しておくこと

  • 主治医から今後の見通しを聞く
  • どの状態まで回復すれば自宅退院が可能か検討し、主治医や相談員に意向を伝える

急性期病院の入院期間は、おおよそ2〜4週間程度。状態が安定してくると、回復期リハビリ病棟や地域包括ケア病棟のある病院へ転院を勧められることが多いです。

転院の説明もなく主治医や病棟のスタッフから「もうすぐ退院です」とだけ伝えられることがあります。
これまでのように歩けない状態で退院と聞くと、不安になるご家族も多いものです。

多くの急性期病院には「医療連携室」や「地域医療連携室」が設置されています。
まずは、そこにいる**医療ソーシャルワーカー(相談員**に相談してみましょう。

医療ソーシャルワーカーは、患者さんの状態や希望に合わせて、次に必要な医療機関や介護施設、在宅サービスなどを紹介・調整してくれます。専門職と一緒に安心できる退院後の生活を考えていきましょう。


回復期リハビリ病棟・地域包括ケア病棟:再び歩く・生活動作を取り戻す

回復期リハビリテーション病棟とは

病気やけがの治療がひと段落したあと、「もう一度、自分の力で生活できるように」リハビリを頑張るための病棟です。
たとえば、脳梗塞や骨折のあとに、歩く・食べる・着替えるといった日常の動作を取り戻すことを目標にします。
入院期間は数か月ほどで、リハビリをしっかり受けながら少しずつ元の生活に近づいていきます。


地域包括ケア病棟とは

「急な治療は終わったけれど、すぐに家に帰るのはまだ不安…」という方が、退院後の生活に向けて体調を整えるための病棟です。
リハビリに加えて、薬の調整や介護の準備など、在宅生活に向けたサポートを受けられます。
入院期間は2〜4週間ほどと短めで、「自宅へ帰るためのステップ」として利用されることが多いです

家族がやるべきこと

  • 退院時期の目安を確認し、どの状態まで回復すれば自宅退院が可能か主治医や相談員に意向を伝える
  • 骨折前の状態から足の弱りや認知面の低下など変化がある際には介護保険申請区分変更申請を検討する
  • 自宅での介護が難しい場合は、施設入所やショートステイの検討

回復期の最終目的は「家に帰る」ことですが、現実には完全に元の生活に戻れないケースもあります。どの状態まで回復すれば自宅退院が可能か考える必要性があります。「トイレまで一人で歩ける」などがその目安の一つです。そのため、入院中から状態(歩き方や認知面)をみておく必要性があります。また介護保険申請(区分変更申請)や施設入所等についても病院の医療ソーシャルワーカーへ相談してみましょう。主治医やケアマネジャーと連携し状態に応じた対応をしてくれます。


退院前カンファレンス:多職種で話し合う「退院準備」

退院が近づくと、病院では必要に応じて「退院前カンファレンス(退院前会議)」が開かれます。
参加するのは、医師・看護師・リハビリスタッフ・医療ソーシャルワーカー・ケアマネジャー・家族など。

この場で確認するのは:

  • 自宅での生活が可能かどうか
  • 介護サービスの内容(デイサービス、訪問リハビリなど)
  • 住宅改修の必要性(手すり、段差解消など)
  • 福祉用具(ベッド、歩行器、手すりなど)の選定

在宅介護をスムーズに始めるためには、このカンファレンスがもっとも重要なタイミングになります。必要に応じて本人・専門職・ケアマネジャーらとともに実際に自宅での動き(トイレやお風呂の動き)を確認することもあります。

ケアマネジャーは、本人や家族の意向を確認。病院と連携し、退院後すぐに介護サービスが使えるよう調整します。


自宅復帰後:再転倒を防ぎながら生活を支える

退院直後は「過信しない」ことが大切

自宅は病院と比べ、物や段差があるなど、環境面で転倒の危険性が高いです。病院では一人で歩けていても油断せず、手すりや歩行補助具(歩行器や杖など)を使うようにしましょう。

自宅でのサポート例

  • 訪問リハビリ:自宅の環境に合わせたリハビリの実施や介助方法の助言
  • 訪問看護:創部の状態確認、服薬管理、全身状態のチェック
  • デイサービス利用:入浴支援・機能訓練・社会交流
  • 福祉用具貸与:ベッド、手すり、歩行器などをレンタル

ケアマネジャーが中心となって、介護保険サービスを組み合わせたケアプランを作成します。

担当のケアマネージャーがついておらず、退院後の生活に不安があるときには、地域包括支援センターへ相談してみましょう


まとめ:転倒骨折後は「チームで支える」ことが鍵

転倒・骨折は、高齢者にとって生活を大きく変える出来事です。
しかし、急性期→回復期→在宅という流れの中で、医療・リハビリ・介護が連携して支えることで、再び家庭での生活を取り戻すことができます。

小さなことでも不安なことは一人で抱え込まず、医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーに相談しましょう。


執筆者:介護支援専門員 kiki

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