「介護サービスの自己負担が、毎月かなりの金額になっている」
「サービスを増やしたいけれど、費用がどこまで高くなるのか心配……」
介護保険サービスの自己負担には、所得に応じて1か月ごとの上限額が設けられています。
上限額を超えて支払った場合、超えた分が払い戻される制度が「高額介護サービス費」です。
ただし、食費や居住費など、計算の対象にならない費用もあります。
この記事では、高額介護サービス費について、次の内容をわかりやすく解説します。
- いくらから払い戻されるのか
- 対象になる費用・ならない費用
- 夫婦で介護サービスを利用している場合の計算
- 申請方法と注意点
制度を知らずに申請期限を過ぎてしまわないように、一度確認してみてください。
介護費用全体の目安を知りたい方は、介護費用はいくらかかる?リアルな平均と内訳も参考になります。毎月の負担を見直したい方は、介護費用を月3万円削減する7つの方法もあわせてご覧ください。

介護で夜も眠れず、限界を感じていても、「ショートステイは高いから」と利用をあきらめてしまうご家族がいます。
高額介護サービス費を活用できれば、自己負担を抑えながら、必要なサービスを利用できる可能性があります。
高額介護サービス費とは?
高額介護サービス費とは、1か月に支払った介護保険サービスの自己負担額が、所得に応じた上限額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。
ポイントは次の3つです。
- 介護保険サービスの自己負担には、月ごとの上限がある
- 同じ世帯に複数の利用者がいる場合は、自己負担額を合算できる
- 上限を超えた分は、原則として申請により払い戻される
介護サービスを多く利用したからといって、対象となる自己負担額が際限なく増え続けるわけではありません。
制度の仕組みは、厚生労働省「高額介護(予防)サービス費の支給事務」でも確認できます。
高額介護サービス費の自己負担上限額
自己負担の上限額は、本人や世帯の所得状況によって異なります。
2026年7月現在の代表的な区分は、次のとおりです。
| 所得区分 | 1か月の上限額 |
|---|---|
| 課税所得690万円以上 | 世帯 140,100円 |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 世帯 93,000円 |
| 市町村民税課税世帯で、課税所得380万円未満 | 世帯 44,400円 |
| 世帯全員が市町村民税非課税 | 世帯 24,600円 |
| 市町村民税非課税世帯のうち、 前年の課税年金収入額と その他の合計所得金額の合計が 80万9,000円以下の人など |
個人 15,000円 世帯 24,600円 |
| 生活保護を受給している人など | 個人 15,000円 |
市町村民税課税世帯のうち、課税所得380万円未満の世帯では、月44,400円が上限です。
なお、所得区分の判定には細かな条件があります。自分がどの区分に該当するかわからない場合は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口へ確認してください。
上限額の根拠は、厚生労働省の資料および一宮市「サービス利用の負担軽減」を参照しています。
月60,000円を支払った場合の計算例
上限額が44,400円の世帯で、対象となる自己負担額が60,000円だった場合は、次のように計算します。
60,000円-44,400円=15,600円
払い戻しの対象となる可能性がある金額:15,600円
ただし、60,000円の中に食費や居住費などが含まれている場合、その費用は計算から除外されます。
夫婦で介護サービスを利用している場合は世帯合算できる
高額介護サービス費は、原則として世帯単位で計算されます。
同じ世帯の夫婦がそれぞれ介護保険サービスを利用している場合、2人の対象となる自己負担額を合算します。
たとえば、上限額が44,400円の世帯で、次の費用を支払ったとします。
- 夫の自己負担額:30,000円
- 妻の自己負担額:25,000円
- 世帯の合計:55,000円
55,000円-44,400円=10,600円
世帯として払い戻しの対象となる可能性がある金額:10,600円
夫婦それぞれの負担額が上限を超えていなくても、世帯で合算すると対象になることがあります。
高額介護サービス費の対象になる費用
高額介護サービス費の対象になるのは、原則として介護保険が適用されたサービスの自己負担分です。
自己負担割合が1割・2割・3割の人が、実際に支払った介護サービス費が対象になります。
代表的なサービスは次のとおりです。
- 訪問介護
- 訪問看護
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリテーション
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 小規模多機能型居宅介護
- 特別養護老人ホームなどの施設サービス
- 介護予防サービス
施設やショートステイを利用した場合も、介護保険が適用された「介護サービス費の自己負担部分」は対象です。
介護保険サービスを使い始める手順は、5分でわかる!介護保険サービスで詳しく解説しています。
高額介護サービス費の対象にならない費用
食費・居住費
施設やショートステイで支払う食費、居住費、滞在費は対象外です。
これらは介護サービスそのものの自己負担ではなく、生活にかかる費用として扱われるためです。
なお、所得や資産などの要件を満たす人には、食費・居住費を軽減する「負担限度額認定制度」があります。
福祉用具購入費
ポータブルトイレや入浴用いすなど、特定福祉用具の購入にかかった自己負担額は、高額介護サービス費の対象外です。
住宅改修費
手すりの設置や段差の解消など、介護保険を利用した住宅改修の自己負担額も対象外です。
支給限度額を超えて利用した費用
介護保険サービスには、要介護度ごとに1か月の支給限度額があります。
支給限度額を超えてサービスを利用し、全額自己負担となった部分は、高額介護サービス費の対象になりません。
日常生活費や介護保険外サービスの費用
次のような費用も対象外です。
- おむつ代
- 理美容代
- 日用品代
- レクリエーション費
- 配食サービスの食事代
- 介護保険外の自費サービス
対象外費用は、文京区「高額介護(介護予防)サービス費の支給」でも確認できます。
高額介護サービス費の申請方法
高額介護サービス費の申請方法は、市区町村によって異なります。
一般的には、次のような流れで手続きをします。
1.市区町村から申請案内が届く
支給対象になると、市区町村から申請書や案内が送られることがあります。
通知が届く時期や申請方法は、自治体によって異なります。
「対象になりそうなのに案内が届かない」という場合は、待ち続けずに市区町村の介護保険担当窓口へ確認しましょう。
2.申請書に必要事項を記入する
申請書には、主に次の内容を記入します。
- 被保険者の氏名
- 被保険者番号
- 住所
- 振込先口座
- 申請者の情報
必要書類や本人確認の方法は、自治体によって異なります。
3.市区町村へ申請する
申請書は、市区町村の介護保険担当窓口へ提出します。
郵送やオンライン申請に対応している自治体もあるため、詳しい方法は市区町村のホームページや窓口で確認してください。
4.審査後に指定口座へ振り込まれる
申請後、市区町村による審査が行われ、支給が決定すると指定口座に振り込まれます。
振込までにかかる期間は、自治体や申請時期によって異なります。
申請は初回だけでよい?
自治体によっては、一度申請して振込先口座を登録すると、2回目以降は申請しなくても自動的に振り込まれます。
一方で、自治体や世帯の状況によっては、再申請や届出が必要になる場合があります。
転居や口座変更、世帯構成の変更があった場合も、手続きが必要になる可能性があります。
申請期限は原則2年
高額介護サービス費を受け取る権利には、原則として2年の時効があります。
申請が必要な状態のまま放置すると、古い利用月の分から受け取れなくなる可能性があります。
時効の起算日などは自治体の扱いによって確認が必要です。詳しくは、神戸市「高額介護(予防)サービス費等の支給」などをご参照ください。

市役所から届く書類は、言葉が難しくて「よくわからない」と感じることもありますよね。
そんなときは、担当ケアマネジャーに気軽に相談してください。ご本人やご家族から書類を見せてもらうことはよくあります。
「こんなことを聞いていいのかな」と遠慮しなくて大丈夫です。
高額介護サービス費についてよくある質問
ケアマネジャーが申請してくれますか?
ケアマネジャーは制度の説明や申請先の案内を行いますが、申請は原則として本人や家族が行います。
本人による申請が難しい場合や、家族が遠方に住んでいる場合は、担当ケアマネジャーまたは市区町村の介護保険担当窓口に相談しましょう。
領収書は必要ですか?
必要書類は自治体によって異なります。
市区町村がサービスの利用実績や自己負担額を確認できる場合、領収書の添付が不要なこともあります。
ただし、支給が完了するまでは、介護サービスの領収書や利用明細書を保管しておくと安心です。
施設の請求額が44,400円を超えたら対象になりますか?
施設から請求された合計額が44,400円を超えただけでは、必ずしも対象になりません。
施設の請求には、食費・居住費・日用品代・理美容代などの実費が含まれていることがあります。
高額介護サービス費の対象になるのは、このうち介護保険サービスの自己負担部分です。
請求書や領収書の「介護保険自己負担額」などの欄を確認しましょう。
夫婦それぞれに申請が必要ですか?
世帯内に複数の介護サービス利用者がいる場合は、世帯合算で計算されます。
ただし、申請者や振込方法などの扱いは自治体によって異なります。申請書の案内に従うか、市区町村へ確認してください。
医療費も高い場合に使える制度はありますか?
医療保険と介護保険の両方の自己負担額が高い場合は、「高額医療・高額介護合算療養費制度」の対象になる可能性があります。
| 制度 | 対象 | 計算期間 |
|---|---|---|
| 高額介護サービス費 | 介護保険サービスの自己負担 | 1か月 |
| 高額医療・高額介護合算療養費制度 | 医療保険と介護保険の自己負担 | 毎年8月1日~翌年7月31日の1年間 |
医療費と介護費の両方を多く支払っている家庭は、加入している医療保険や市区町村の窓口に相談してみましょう。
詳しくは、厚生労働省「高額医療・高額介護合算療養費制度について」をご確認ください。
高額介護サービス費の還付を装った詐欺にも注意
自治体職員などを名乗り、「介護保険料の払い戻しがあります」「ATMで手続きをしてください」と電話をかけてくる還付金詐欺にも注意が必要です。
電話で暗証番号を聞いたり、キャッシュカードを預かったりすることもありません。
不審な電話があった場合は、その場で対応せず、いったん電話を切ってから市区町村の窓口や警察に相談してください。
高齢の親を詐欺から守る方法については、高齢の親を詐欺から守る方法|警察庁推奨アプリ・固定電話対策で詳しく解説しています。
まとめ|介護サービス費が高いと感じたら一度確認を
高額介護サービス費は、介護保険サービスの自己負担額が所得に応じた上限を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。
- 介護保険サービスの自己負担には月ごとの上限がある
- 市町村民税課税世帯のうち、課税所得380万円未満の世帯の上限は月44,400円
- 同じ世帯の夫婦などは自己負担額を合算できる
- 食費・居住費・福祉用具購入費・住宅改修費などは対象外
- 支給を受けるには原則として申請が必要
- 初回申請後の取り扱いは自治体によって異なる
- 申請期限は原則2年
- 医療費も高い場合は、別の合算制度を利用できる可能性がある
介護サービスの請求額が高いと感じたら、まずは領収書や利用明細書を確認してみましょう。
「自分の家庭が対象になるかわからない」という場合は、担当ケアマネジャーやお住まいの市区町村の介護保険担当窓口に相談してください。

「必要なのはわかっているけれど、費用が心配」と、サービスを控える前に担当ケアマネジャーへ相談してみてください。
利用できる制度を確認しながら、本人も家族も無理なく介護を続けられる方法を一緒に考えていきましょう。
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