「あなた、若いのにケアマネなの?」 「あなたで大丈夫?」
担当した利用者さんのご家族にそう思われるんじゃないか。 それがケアマネになる一番の不安でした。
この記事は、ケアマネへの転職・キャリアチェンジを考えている30代の方に向けて、「転職前に知っておきたかった」と今の私が思う話を、正直に伝えたいと思います。
30代ケアマネは”希少種”
ケアマネジャー全体に占める40歳未満の割合は、約7.6%。
100人のケアマネがいたとしたら、30代以下はたった7〜8人しかいない計算です(2024年・介護労働実態調査)。平均年齢は53.6歳で、60歳以上が全体の約3割を占めています。
なぜこうなるかというと、ケアマネになるには介護現場での実務経験が5年(※2027年度から3年に短縮予定)に加えて、試験の合格率の低さや、合格後も87時間の研修+原則3日間の実習を終えて初めてケアマネになれるという高いハードルがあります。
加えて30代は結婚・出産・育児というライフイベントが重なりやすく、ちょうどその時期にこれらをこなすことが難しいケースもあります。
そしてもう一つ、次の表を見てください。
| 時期 | 合格率の傾向 |
|---|---|
| 第1回(1998年) | 44.1%(受験者20万人超) |
| 第2回〜第7回(1999〜2004年) | 30〜44%台と高め |
| 第8回〜(2005年〜) | 30%を割り込み、難化傾向 |
| 第14回〜(2011年〜) | ほぼ10%台で推移 |
| 第21回(2018年) | 10.1%(過去最低)※受験資格厳格化の影響 |
| 第27回(2024年) | 32.1%(直近10年で最高) |
| 第28回(2025年) | 25.6% |
これは開催ごとの合格率推移です。
第1回(1998年)が44.1%の合格率で、受験者が20万人超。そのころに合格した人たちが今ちょうど50〜60代になっていて、「ケアマネの平均年齢53.6歳・60歳以上が3割」というデータとぴったり重なります。
つまり介護保険制度の開始時に「大量採用」された世代が、そのままケアマネ業界の主力層になっているという構造です。
「30代ケアマネが少ない理由は、ベテランしかケアマネになれないのではなく、業界の歴史的な構造によるもの」という考え方もできます。
つまり、30代でケアマネをしているだけで少数派。そしてその少数派だからこそ、業界全体では語られにくい「30代特有のしんどさ」が確実にあります。
転職前に心配したこと、実際はどうだったか
若いケアマネだとガッカリされる
いちばん不安だったのがこれです。30代のケアマネが担当になって、「頼りなさそう」と思われないかと心配でした。
でも実際は——そんなことは、ほとんどありませんでした。
むしろ利用者さんからは孫のようにかわいがってもらったり、エネルギッシュに動けること、話し相手になれることを、好意的に受け取ってもらえる場面のほうが多かったです。
信頼は積み上げていくものだという前提は変わりません。でも「若さゆえに舐められる」という経験は、ほとんどありませんでした。転職前にこれを心配しているなら、必要以上に怖がらなくて大丈夫だと伝えたいです。
「職場で浮く」も、杞憂だった
平均年齢53歳の業界に30代で飛び込むと聞いたら、「話が合わないんじゃないか」と思うのが普通だと思います。私もそう思っていました。
でも実際は——年上の先輩たちが、すごく親切でした。
経験豊富なベテランに丁寧に教えてもらいながら仕事を覚えていける。「若いから聞きやすい」という空気があるし、パソコン操作など頼られることも多いです。
むしろ心配すべきは年齢差ではなく、その職場の雰囲気そのもの。面接でしっかり確かめるべきはそっちだと思っています。
そしてケアマネジャーはさまざまな事業所の方と関わります。
デイサービスの管理者さんや訪問リハビリのスタッフ、福祉用具業者・・
30代の方も多く活躍されています。
同年代だとお互い本音で話しやすいこともあり、連携がスムーズにとることができます。
もちろん年上の方も丁寧に対応してくださいます。
これが本音。30代ケアマネが感じる「しんどさ」
給与:「介護福祉士のほうが高かった」問題
これは転職前に絶対に知っておいてほしい話です。
30代ケアマネの平均年収はおよそ353万円(居宅で約380万円、施設系で約370万円)。月給にすると22〜24万円スタートのケースも多いです。
問題は、介護福祉士には「特定処遇改善加算」という手当がある一方で、居宅ケアマネはこの処遇改善加算の対象外だということ。結果として「スキルアップでケアマネになったのに、現場の介護福祉士より給料が下がった」という逆転現象が、現実に起きています。
30代は結婚・住宅購入・子育てと、人生のコストが上がり続ける時期。「ケアマネになれば給料が上がる」という期待をそのまま持って転職すると、拍子抜けすることがあります。
もちろん夜勤なしでこの給料と思えば、悪い選択ではないかもしれません。
なお、2026年6月から居宅ケアマネも処遇改善加算の対象に加わりました(詳しくは後述)。長年の課題にようやく制度が動き出したタイミングでもあります。
板挟み:誰かと誰かの「間」に立ち続ける消耗
利用者さんは「サービスを使いたくない」と言う。家族は「サービスを使ったほうがいい」と言う。訪問介護事業所は「この条件では対応できない」と言う。医師の指示と本人の希望が食い違っている——。
こういう「誰かと誰かの間」に立って調整する場面が、毎日のように来ます。誰かを傷つけないようにしながら、どちらにも誠実であろうとする。その消耗は、やってみないとわからない種類のしんどさがあります。
仕事終わりに「終わった」と思えない
介護職をしていたころは、退勤したら気持ちが切り替わりました。体はきつくても、「今日の仕事は終わった」という解放感がありました。
ケアマネになって、それがなくなりました。
担当している利用者さんは、業務時間が終わっても生活し続けています。「あの方の状態、大丈夫だろうか」「昨日の家族との話、うまく伝わっていたかな」——そういう思考が、退勤後もずっと頭の隅に居座ります。支援に切れ目がない分、自分の中でも仕事の終わりがはっきりしない。
介護現場から転身して最初に戸惑うのが、この感覚かもしれません。
緊急対応:休日も携帯が手放せない
居宅ケアマネの場合、24時間対応の加算を算定し、緊急連絡の窓口がケアマネになっている職場では、休日でも電話を切れないという状態になります。
子どもの迎えの時間に緊急連絡が入る。家族で出かけているときに携帯が鳴る。「今日は何もなければいいな」と思いながら過ごす休日——これが常態化すると、精神的な疲弊がじわじわと積み重なります。
休日の対応も事業所によって異なります。事前に確認をしておくと良いでしょう。
デスクワーク:「頭が全然休まらない」
介護現場から転身してきた人が口をそろえて言うのが「頭が疲れる」という言葉です。
毎月、利用者宅を訪問に加え、新規利用者のアセスメント、ケアプラン作成、介護保険更新手続き、給付管理、入退院の対応、急なサービス調整……利用者宅の訪問に加え、書類業務をこなしていきます。
そして同時進行で利用者数名の対応を行わないといけないこともあります。
予定通りには進まないので、優先順位を常に考えながら対応していきます。
「身体は楽になったけど、頭が全然休まらない」——転職前に想定しておきたいギャップです。
それでも、辞められない理由がある
ここまで読んで「しんどいことばかり」と思ったかもしれません。でも、だから辞めているかというと——そうじゃないんです。
利用者さんが「あなたに担当になってもらって良かった」と言ってくれたとき。在宅での生活が難しいと思っていた方が、サービスを組み合わせることで穏やかに暮らせるようになったとき。家族が「おかげさまで安心できました」と笑顔になったとき。
「やっぱり辞めよう」と思った朝でも、利用者さんの顔を見たら気持ちが変わる。人の生活を、最期の時間を、そばで支えるこの仕事は、替えのきかないやりがいがあります。
転職するなら、ここだけは確認してほしい
居宅か施設か
子育て中の30代には施設ケアマネのほうが働きやすいケースが多いです。担当利用者が施設内にいるため緊急の外出が少なく、夜間対応も施設側に委ねられることが多い。一方、居宅ケアマネはスキルアップの実感がしやすく、仕事の幅が広いです。
緊急対応の体制を面接で必ず聞く
「夜間・休日の緊急連絡はどう対応していますか?」——これを必ず確認してください。担当者が個人の携帯で受けるのか、チームで回しているのかで、プライベートへの影響が大きく変わります。
給与は「処遇改善加算の対象かどうか」で見る
求人票の数字だけでなく、処遇改善加算が適用されるかを確認しましょう。2026年6月から居宅ケアマネも対象になりましたが、職場によって実際の配分額は異なります。求人票と合わせて確認するのがおすすめです。
主任ケアマネへのキャリアパスがあるか
ケアマネの年収アップには主任ケアマネジャーの取得が有効です。資格手当がつくことも多く、管理職への道も開けます。職場がキャリアアップを支援しているかも、長期的な視点で確認しておきたいポイントです。
2026〜2027年、ケアマネを取り巻く制度が大きく変わる
転職・キャリアチェンジを考えているなら、今は制度の変わり目という点でも注目すべきタイミングです。
更新研修の「失効リスク」がなくなる
これまでケアマネジャーの資格は5年ごとに更新研修を受けなければ失効する仕組みでした。初回は88時間、費用も自己負担のケースが多く、仕事・子育て・研修の3つを並行させる負担は相当なものでした。
この更新制が廃止される方向で法整備が進んでいます。2026年4月に政府が介護保険法などの改正案を閣議決定し、現在国会で審議中です(施行は公布後1年半以内の予定)。
ただし、「研修が一切不要になる」というわけではありません。更新制はなくなりますが、定期的な研修受講はケアマネジャーの法的な義務として残ります。変わるのは「受けないと資格が失効する」という仕組みで、受講の仕方がより柔軟になる(オンライン受講・分割受講・時間数の圧縮)方向で検討が進んでいます。
5年ごとの研修を「義務の締め切り」として追いかける今の状況は変わります。30代でケアマネになることへのハードルが、一つ下がる改正です。
居宅ケアマネにも処遇改善加算が適用
給与の話で「居宅ケアマネは処遇改善加算の対象外」と書きましたが、これも変わりました。
2026年6月の介護報酬臨時改定で、居宅介護支援が新たに処遇改善加算の対象に加わりました。加算率は2.1%(訪問看護の1.8%を上回る水準)。まだ始まったばかりで職場によって実際の配分は異なりますが、「ケアマネは処遇改善の恩恵を受けられない」という長年の課題に、ようやく制度が動き出しました。
受験要件も「5年→3年」へ短縮予定
ケアマネの受験に必要な実務経験も、現行の5年から3年へ短縮される方向で進んでいます(2027年度の制度改正での実施を目指す)。介護職を始めた20代後半〜30代前半でも、より早くケアマネを目指せるようになります。
最後に、現役30代ケアマネからひとこと
ケアマネジャーは、決して楽な仕事ではありません。しんどいことも、報われないと感じる日も、あります。
でも、この仕事の核心は「人の生活を支える」ということで、そのやりがいは本物です。
30代でこの業界に来ることは、少数派であることは、弱みじゃありません。
「若いのに」じゃなくて、「若いから」できることがある。
もし迷っているなら、その判断材料のひとつに、この記事がなれたら嬉しいです。
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- [ケアマネ受験要件 2026年改正の最新情報](記事追加予定)
- [居宅 vs 施設、30代におすすめなのはどっち?](記事追加予定)
- [30代女性ケアマネの両立術 / 時短勤務の選び方](記事追加予定)
この記事はケアマネジャーとして働く筆者(kiki)の実体験と、介護労働実態調査・厚労省データをもとに執筆しています。

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