「介護保険では、どんなサービスを利用できるの?」
「親に合うサービスが分からない」
介護が始まると、サービスの種類や選び方に迷う方は少なくありません。
介護保険サービスには、自宅で受けるもの、施設へ通うもの、短期間泊まるもの、施設で生活するものなどがあります。
この記事では、地域包括支援センターで働く現役ケアマネジャーが、主な介護保険サービスの特徴と向いている方を、初心者にも分かりやすく解説します。
最初からサービスを自分で決める必要はありません。困っていることをケアマネジャーや地域包括支援センターへ伝え、一緒に考えていきましょう。
介護保険サービスとは?
介護保険サービスとは、介護や支援が必要な方が、自宅や施設で安心して生活を続けるためのサービスです。
利用することで、本人の生活を支えるだけでなく、介護する家族の負担軽減にもつながります。
要介護1~5の方だけでなく、要支援1・2の方も、介護予防を目的としたサービスを利用できます。

ケアマネkikiより
「介護保険を使うのは、介護が重くなってから」と思う方もいます。
しかし、実際には要支援の段階からサービスを利用し、今できていることを維持することも大切です。
認定結果が「非該当」でも、自治体の介護予防事業や地域の支援を利用できる場合があります。まずは地域包括支援センターへご相談ください。
介護保険サービスの種類
介護保険サービスは、利用する場面によって次のように分けると理解しやすくなります。
- 自宅で受けるサービス
- 施設へ通うサービス
- 短期間泊まるサービス
- 通い・訪問・宿泊を組み合わせるサービス
- 福祉用具・住宅改修
- 施設で生活するサービス


自宅で受けるサービス
訪問介護(ホームヘルプ)
ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行います。
身体介護では、食事・入浴・排せつ・着替えなどを介助します。
生活援助では、本人のための掃除・洗濯・調理・買い物などを支援します。
ただし、同居家族のための家事、大掃除、庭の手入れ、ペットの世話などは、原則として介護保険の対象になりません。
同居家族がいる場合でも、病気や障害、就労状況、家族関係などによって生活援助を利用できることがあります。利用の可否は一律ではないため、ケアマネジャーへ相談しましょう。
こんな方におすすめ
- 食事や入浴、排せつに介助が必要な方
- 一人で家事を行うことが難しい方
- 自宅での生活を続けたい方
- 家族の介護負担を軽減したい方
訪問入浴介護
専用の浴槽を自宅へ持ち込み、看護職員と介護職員が入浴を支援します。
寝たきりなどで、自宅の浴室やデイサービスでの入浴が難しい方も利用できます。
入浴前後に体温や血圧などを確認し、安全に配慮しながら行います。

ケアマネkikiより
初めての方は「家に浴槽を持ってくるの?」と驚かれます。
入浴後の気持ちよさそうな表情を見ると、入浴は清潔を保つだけでなく、楽しみや生活の張りにもなると感じます。
こんな方におすすめ
- 寝たきりなどで自宅の浴槽を使えない方
- デイサービスでの入浴が難しい方
- 家族だけでの入浴介助が難しい方
訪問看護
看護師などが自宅を訪問し、主治医の指示に基づいて療養生活を支援します。
健康状態の確認、服薬管理、床ずれや傷の処置、点滴、医療機器の管理などが主な内容です。
本人への支援だけでなく、家族への介護方法の助言や主治医との連携も行います。
病気や状態によって、介護保険ではなく医療保険が適用される場合があります。

ケアマネkikiより
訪問看護は、医療処置だけを行うサービスではありません。
食事や水分の相談、室温の調整、家族への助言など、安心して自宅で暮らすための幅広い支援を受けられます。
こんな方におすすめ
- 医療処置や健康管理が必要な方
- 病気があっても自宅で生活したい方
- 服薬管理に不安がある方
- 家族も介護方法を相談したい方
訪問リハビリテーション
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが自宅を訪問し、生活環境に合わせたリハビリを行います。
歩行や立ち上がりだけでなく、着替え、トイレ、家事、飲み込み、会話など、その人の生活目標に応じた練習を受けられます。
自宅の動線や福祉用具について助言を受けられることも特徴です。
こんな方におすすめ
- 歩行や立ち上がりに不安がある方
- 自宅での生活動作を維持したい方
- 飲み込みや会話の機能が気になる方
- 退院後もリハビリを続けたい方
居宅療養管理指導
医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士などが自宅を訪問し、療養生活に必要な指導や助言を行います。
薬の管理、栄養、口腔ケアなど、職種によって支援内容が異なります。
なお、医師による居宅療養管理指導は「訪問診療そのもの」ではなく、ケアマネジャーなどへ療養上の情報を提供し、本人や家族へ助言する介護保険サービスです。

ケアマネkikiより
薬剤師が自宅を訪問すると、飲み忘れの原因が保管場所や生活リズムにあると分かることがあります。
自宅だからこそ見つかる課題に合わせて、無理なく続けられる管理方法を一緒に考えてもらえます。
こんな方におすすめ
- 通院や薬局へ行くことが難しい方
- 薬の飲み忘れや管理に不安がある方
- 食欲低下や低栄養が気になる方
- 口腔ケアや飲み込みに不安がある方
施設へ通うサービス
通所介護(デイサービス)
日帰りで施設へ通い、食事・入浴・排せつの支援、機能訓練、レクリエーションなどを受けます。
外出や交流の機会になり、家族が介護を休む時間の確保にもつながります。
運動中心の半日型、認知症ケアに力を入れる事業所、趣味活動が充実した事業所など、特色はさまざまです。

ケアマネkikiより
「私にはまだ早い」と話す方には、まず見学や体験利用をご案内します。
実際に足を運ぶと、「思っていた雰囲気と違った」「運動なら続けたい」と前向きになる方もいます。
こんな方におすすめ
- 日中一人で過ごす時間が長い方
- 自宅での入浴に不安がある方
- 運動や趣味活動を楽しみたい方
- 家族の介護負担を軽減したい方
通所リハビリテーション(デイケア)
病院・診療所・介護老人保健施設などへ通い、医師の指示のもとでリハビリを受けるサービスです。
理学療法士などの専門職が、身体機能や生活動作の維持・改善を支援します。
こんな方におすすめ
- 専門職によるリハビリを受けたい方
- 退院後も継続してリハビリが必要な方
- 日常生活の動作を改善したい方
- 医学的な管理が必要な方
短期間泊まるサービス
短期入所生活介護・短期入所療養介護(ショートステイ)
短期間施設に宿泊し、食事・入浴・排せつなどの介護や生活支援を受けます。
家族の休息、冠婚葬祭、出張、体調不良などで一時的に介護が難しいときにも利用できます。
短期入所療養介護では、介護に加えて医療的な管理やリハビリを受けられます。

ケアマネkikiより
「家族を預けるのは申し訳ない」と感じる方は少なくありません。
介護を長く続けるためには、家族が休むことも大切です。ショートステイは、本人だけでなく家族の生活も支えるサービスです。
こんな方におすすめ
- 一時的に家族の介護が難しくなる方
- 家族が休息を必要としている方
- 退院後の在宅生活に不安がある方
- 本人に外泊や交流の機会を作りたい方
通い・訪問・宿泊を組み合わせるサービス
小規模多機能型居宅介護
「通い」を中心に、「訪問」と「宿泊」を同じ事業所で組み合わせて利用します。
顔なじみの職員が継続して関わるため、環境の変化に不安を感じやすい方にも向いています。
利用回数や時間を柔軟に調整しやすいことも特徴です。
こんな方におすすめ
- 認知症があり、環境の変化が苦手な方
- 一人暮らしで在宅生活を続けたい方
- 状況に応じて柔軟に支援を受けたい方
- 複数の事業所とのやり取りを減らしたい方
看護小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護の「通い・訪問・宿泊」に訪問看護を組み合わせたサービスです。
医療的ケアを受けながら、できる限り自宅で暮らしたい方を支えます。
地域によっては事業所が少ないため、早めにケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談しましょう。
こんな方におすすめ
- 医療処置が必要な方
- 退院後も自宅で生活したい方
- 在宅での看取りを希望する方
- 介護と看護の両方が必要な方
福祉用具・住宅改修
福祉用具貸与
車いす、歩行器、介護ベッドなどをレンタルし、在宅生活を支えるサービスです。
身体状態や要介護度によって、介護保険の対象となる用具が異なります。
ケアマネジャーや福祉用具専門相談員と相談し、本人の身体状態と住環境に合うものを選びます。

ケアマネkikiより
福祉用具は「介護の道具」ではなく、「今までの生活を続けるための道具」です。
歩行器を使い、毎日続けていた仏壇へのお供えや、旅行先での食事を再び楽しめるようになった方もいます。
こんな方におすすめ
- 歩行や立ち上がりに不安がある方
- 転倒を予防したい方
- 自宅で安全に生活したい方
- 介助する家族の負担を軽減したい方
特定福祉用具販売
入浴や排せつに使用する福祉用具など、衛生上レンタルに適さない対象用具を購入した際に、費用の一部が支給される制度です。
腰掛便座、入浴補助用具、簡易浴槽などが対象になります。
年間の支給限度額や指定事業者からの購入など、利用条件があります。
一部の福祉用具では、貸与と販売を選べる制度もあります。購入前に必ずケアマネジャーや市区町村へ確認してください。
こんな方におすすめ
- 入浴やトイレ動作に不安がある方
- 転倒を予防したい方
- 衛生面から自分専用の用具が必要な方
- 安全に在宅生活を続けたい方
住宅改修
手すりの設置、段差の解消、滑りにくい床材への変更など、対象となる住宅改修費の一部が支給されます。
転倒予防だけでなく、自分でできる動作を増やし、家族の介助負担を軽くする効果も期待できます。
原則として工事前の申請が必要です。先に契約や工事をせず、ケアマネジャーや市区町村へ相談してください。

ケアマネkikiより
手すりを設置したことで、庭の花の世話や自宅での入浴を再び楽しめるようになった方もいます。
住宅改修は、リハビリで身につけた力を実際の暮らしにつなげる支援でもあります。
こんな方におすすめ
- 自宅内の段差や転倒が心配な方
- 入浴やトイレを安全に行いたい方
- 自分でできる動作を増やしたい方
- 住み慣れた自宅で暮らし続けたい方
施設で生活するサービス
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症のある方が、1ユニット9人以下の少人数で共同生活を送りながら介護を受けるサービスです。
原則として、認知症と診断された要支援2または要介護1以上の方が対象です。
地域密着型サービスのため、施設がある市区町村の住民であることなどの条件があります。

ケアマネkikiより
私の祖母は、自宅で続けていた「洗濯物をたたむ」という役割をグループホームでも続けていました。
認知症があっても、誰かに感謝され、自分の役割を持つことは、その人らしい生活を支える力になります。
こんな方におすすめ
- 認知症と診断されている方
- 少人数の落ち着いた環境を希望する方
- 自宅での生活が難しくなってきた方
- できることを続けながら生活したい方
地域密着型特定施設入居者生活介護
定員29人以下の介護付き有料老人ホームなどで、日常生活の介護や機能訓練を受けるサービスです。
少人数のため、本人の生活リズムに合わせた支援を受けやすいことが特徴です。
原則として、施設がある市区町村の住民が利用できます。
こんな方におすすめ
- 少人数の施設で生活したい方
- 日常生活全般に介護が必要な方
- 住み慣れた地域で暮らしたい方
地域密着型介護老人福祉施設
定員29人以下の特別養護老人ホームです。
原則として要介護3以上で、施設がある市区町村の住民が対象です。
長期的な生活の場として、食事・入浴・排せつなどの介護や機能訓練を受けます。
こんな方におすすめ
- 要介護3以上で在宅生活が難しい方
- 少人数の落ち着いた環境を希望する方
- 住み慣れた地域で暮らし続けたい方
- 長期的な介護が必要な方
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム・特養)
常に介護が必要で、自宅での生活が難しい方が長期間生活する施設です。
新規入所は原則として要介護3以上が対象です。
ただし、要介護1・2でも、認知症や家族状況などによって在宅生活が著しく難しい場合は、特例入所が認められることがあります。

ケアマネkikiより
施設へ入所しても、家族の役割がなくなるわけではありません。
介護する時間が減ることで、一緒にお茶を飲んだり季節の話をしたりと、親子として穏やかに過ごせるようになったご家族もいます。
入所は介護を諦めることではなく、本人と家族の生活を守る選択肢の一つです。
こんな方におすすめ
- 要介護3以上で在宅生活が難しい方
- 長期的な介護が必要な方
- 家族だけでの介護が難しい方
- 費用を抑えられる施設を探している方
介護老人保健施設(老健)
病院を退院したあと、自宅での生活へ戻ることを目指して、リハビリや介護を受ける施設です。
医師・看護師・リハビリ専門職などが連携し、食事、トイレ、入浴などの生活動作も練習します。
長期入所を前提とした生活施設ではなく、在宅復帰を支援する「中間施設」と位置づけられています。
こんな方におすすめ
- 退院後すぐの在宅生活に不安がある方
- 集中的にリハビリを受けたい方
- 在宅復帰を目指している方
- 医療職による支援が必要な方
介護医療院
長期的な医療と介護の両方が必要な方のための施設です。
医師や看護師が配置され、医療的ケア、日常生活の介護、看取りなどを一体的に提供します。
生活の場としての役割を持つ点が特徴です。
こんな方におすすめ
- 長期的な医学的管理が必要な方
- 医療と介護の両方が必要な方
- 在宅生活が難しくなった方
- 看取りまで対応できる生活の場を探している方
介護保険サービス早見表
| サービス | 主な内容 | 自宅生活 | 宿泊 | 医療対応 |
|---|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 身体介護・生活援助 | ○ | ― | △ |
| 訪問看護 | 健康管理・医療処置 | ○ | ― | ◎ |
| 訪問入浴 | 自宅での入浴介助 | ○ | ― | ○ |
| 訪問リハビリ | 自宅でのリハビリ | ○ | ― | ○ |
| デイサービス | 日帰りの介護・交流 | ○ | ― | △ |
| デイケア | 日帰りのリハビリ | ○ | ― | ○ |
| ショートステイ | 短期間の宿泊 | ○ | ○ | △~○ |
| 福祉用具・住宅改修 | 住環境の整備 | ○ | ― | ― |
| 小規模多機能 | 通い・訪問・宿泊 | ○ | ○ | △ |
| 看護小規模多機能 | 介護と看護の一体支援 | ○ | ○ | ◎ |
| グループホーム | 認知症の方の共同生活 | ― | ○ | △ |
| 特別養護老人ホーム | 長期的な生活介護 | ― | ○ | ○ |
| 介護老人保健施設 | 在宅復帰支援 | △ | ○ | ◎ |
| 介護医療院 | 長期的な医療・介護 | ― | ○ | ◎ |
※医療対応の範囲は事業所や施設によって異なります。具体的な対応内容は、利用前に確認してください。
介護保険サービスを利用するまでの流れ
介護保険サービスは、基本的に次の順番で利用します。
- 市区町村または地域包括支援センターへ相談
- 要介護・要支援認定を申請
- 認定調査と主治医意見書
- 審査を経て要介護度が決定
- ケアプランを作成
- 利用する事業所と契約
- サービスの利用開始

要介護1~5で在宅サービスを利用する方は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーへ相談します。
要支援1・2の方は、原則として地域包括支援センターへ相談します。入院中の場合は、病院の医療ソーシャルワーカーや退院支援担当者にも相談できます。
介護保険サービスにかかる費用
介護保険サービスの自己負担は原則1割です。一定以上の所得がある方は、2割または3割を負担します。
また、食費、居住費・滞在費、日用品代、理美容代などは、介護保険の自己負担とは別に必要です。
在宅サービスには要介護度ごとの支給限度額があります。限度額を超えて利用した分は、原則として全額自己負担になります。

実際の料金は、地域、事業所、利用時間、加算などによって異なります。契約前に料金表や重要事項説明書を確認しましょう。
介護保険サービス選びで迷ったら
サービスの種類が多く、「どれを選べばよいか分からない」と感じるのは自然なことです。
サービス名を決めてから相談する必要はありません。
まず、次のような「生活上の困りごと」を伝えてください。
- 一人で入浴するのが危ない
- 薬を飲み忘れる
- 転倒が増えた
- 日中一人で過ごすのが心配
- 退院後の生活に不安がある
- 家族が十分に休めない
ケアマネジャーや地域包括支援センターが、本人の希望、身体状態、住環境、家族の状況を確認しながら、必要なサービスを一緒に考えます。
「まだ早いかもしれない」と思う段階で相談することが、選択肢を広げることにもつながります。
まとめ
介護保険サービスには、それぞれ異なる役割があります。
大切なのは、「どのサービスが一番良いか」ではなく、本人の希望や今の生活に合ったサービスを選ぶことです。
私は地域包括支援センターで多くの方と関わるなかで、介護サービスは「できなくなったことを補うだけのもの」ではなく、その人らしい暮らしを続けるための支えだと感じています。
介護に不安や戸惑いを感じたら、一人で抱え込まず、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談してください。
介護サービスを上手に活用することで、本人だけでなく、家族にも安心できる時間が増えていきます。

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